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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

 Tシャツを捲り、ブラトップの中に手を入れられた瞬間に――私は里見くんの舌を噛んだ。

「……っ、さ」

 のに、里見くんは怯まない。痛いかと思って遠慮したのが駄目だったようだ。それなら、思いきりいきましょう。
 思いきり。

 私が大きく口を開けた意図を理解してか、里見くんの舌がずるりと抜ける。
 私の口内を満たしていた甘い温もりがなくなって、一瞬、寂しくなったけれど、それとこれは別問題。

「っは……ぁ」
「なに、邪魔しているんですか」
「里見くんこそ、なに、しているんで……んあっ」

 冷たい指がお腹を撫でる。こっちの存在を忘れていた。
 慌てて指をブラトップの中から追い出そうと体を捩ると、また唇を塞がれる。

 ……何一つ解決していないっ!

「っ、ふ……さと、あっ」

 駄目だ、酸素が不足して、うまくものが考えられない。力が入らない。
 追い詰められているのに、気持ちいい。
 駄目だ。キスだけでとろけてしまいそう。

 キスが甘いのが悪い。

 里見くんの指が体を這うのが悪い。

 私の体が里見くんを拒絶しないのが悪い。

 悪いことばっかりだから、何も考えないで流されてしまいたくなる。流されてもいいことなんて、何もないのに。
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