この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

「いい?」
嫌だったら拒否して、と里見くんは言った。
……嫌じゃないの。困ったことに。
拒否をする理由ならいろいろある。まだ早いとか、梓に釘を刺されているからだとか、あと一年待ってほしいだとか。
でも、嫌か嫌じゃないかと聞かれたら、嫌じゃない。
里見くんから求められることは、嫌じゃない。できれば、受け入れたいと思っている。
でも。でも――。
「里見くん」
「はい」
「キスだけで我慢できますか?」
「……男の生理現象としては無理です。でも、我慢しろと言われるなら……非常に辛いですが、我慢します」
問題を先送りにするべきじゃない。生徒にも言っていることだ。私もよくわかっている。
けれど。
今は、まだ、勇気が出ない。
「あの、あと一週間、我慢できますか?」
顔なんか上げられない。真っ赤だ。
絶対真っ赤だ。
恥ずかしくて死にそう。
里見くんは小さく「一週間」と呟いて喉を鳴らす。

