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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

「それは、一週間後なら、良いと?」
「……駄目、ですか?」
「待つのは得意なので、待ちましょう。来週は金土で静岡に出張でしたよね? なら、土曜の夜でいいですか? 日曜が良いですか?」

 静岡から帰ってくるのが、たぶん十八時くらい。
 日曜はカレンダーには予定を書き入れていたけど、そこまで大事なものではない。キャンセルもできる。

「……じゃあ、土曜の夜がいいです」
「良かった。一週間、俺のことを想っていてくれるんですね。嬉しい」

 ぎゅうと抱きしめられる。
 優しく暖かな腕の中。

 いつの間にか指はブラトップから抜かれ、背中に回されている。
 里見くんの硬くなってしまったものは、私に当たらないように腰を引いてくれている。

 ごめん。ごめんね。
 今、前に進めなくて、ごめん。

「ちなみに、土曜日は――」

 私は意気地無しだなぁ。

「――俺の誕生日なので、俺の言うことはぜんぶ聞いてもらいますね」

 ……え?

「楽しみです」

 ぺろりと舌舐りをして、里見くんは意地悪そうに笑った。そして、そのままの笑みで私にキスをする。

 甘い舌を受け入れながら、私は絶望する。


 ……私、選択肢を間違えたかもしれない。
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