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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

「一週間、キスはしてもいいですよね?」
返事をする前に唇を塞がれたら、どうしようもないんですけど。
里見くんはずっとキスをしていないと死んでしまう病気にでもなったのだろうか。
ようやく洗い物を始めても、ずっと後ろからうなじや肩のあたりにキスをしてばかりいる。たまに頬や、唇に降ってくるキス。
下腹部の疼きを止めるのに私は必死になってしまう。
私、里見くんとのキス、結構好きだ……。
「里見くんは、キス、我慢できますか?」
「無理です」
即答だ。
まぁ、そうだと思った。
だから、里見くんが望むから、許さざるを得ないという格好がつく。
「じゃあ、してもいいですが、人目のあるところでは絶対にしないでください。あと、キスマークも駄目です」
「……見えないところならいいですか?」
「まぁ、見えないところなら」
最大の譲歩だ。絶対に生徒から見える場所にはつけられたくない。見えないところなら許容するしかない。
包丁を洗うとき里見くんは少し強ばっていた。
さすがにキスはしてこなかった。賢明な判断だと思う。
代わりに、ぎゅうぎゅうに抱きしめられていたけれど。
「小夜」
……駄目だ。
私、名前を呼ばれるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
体が震えてしまう。
里見くんが甘い声で呼ぶから、本当に困る。
「まだ、付き合ってはくれませんか?」
「付き合ったとしても、絶対に誰にも喋れませんよ」
「いいですよ。構いません。小夜が俺のものだという確証が欲しい」
付き合う、付き合わない、が議題に挙がるなんて、子どもみたいだ。
里見くんは、まだ縛られたいのだろうか。見えない鎖に。

