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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

 洗い物がぜんぶ終わったタイミングで、里見くんが私をまた正面から抱きしめる。
 そして、すぐにキスをしてくる。里見くんはキス魔か。

「小夜。愛しています。結婚を前提に俺と付き合ってください」

 確証。
 それに頷けば、里見くんは私を絶対に手放すことはない。
 たぶん、一生。
 執着心の塊みたいな人だ。私を手に入れるなら何でもする、とでも言いそうだ。

 本当に、怖い。
 礼二とは全くタイプが違うから、どう接すれば良いのかわからない。

 けれど。

「じゃあ……とりあえず、お願いします」

 背伸びをして、ちゅっと里見くんの唇に触れる。
 その瞬間に、里見くんの顔が真っ赤になる。くにゃりと口元が緩んで、さっきまでのキリッとした表情はどこへやら。嬉しそうにニヤニヤし始める。

 ぎゅうぎゅうと強く抱きしめられてしまうと、苦笑するしかない。
 本当に不思議。私の言動行動一つで、こんなに人が変わるなんて。不思議。

 君は、そんなに私のことが好きなの。

「小夜、先生……もう我慢できないので、トイレお借りします」
「あ、はい」

 里見くんが催しているものが尿意や便意ではないことに気づいて、私は前かがみになりながらトイレに向かう彼に声をかける。

「お手伝いしましょうか?」
「結構です!」
「……ごゆっくり」

 里見くんがトイレに鍵をかけた音を聞いたあとで。
 さて、私も今のうちに新しいショーツを準備しておこう。たぶん、悲鳴が上がるくらい――濡れているから。

 あと一週間。
 さあ、覚悟を決めろ、小夜。
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