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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

里見くんは夕飯の前には帰った。
一応、食べていくかどうか誘ったけれど、「今日はもう無理です」と泣きそうになりながら、帰っていった。
あれから、二回か三回くらいトイレへ駆け込んでいたので、さすがにしんどかったのだと思う。
だったら、キスをやめればいいのに、細案が行き詰まったらキス、私が小テストを作り終えるたびにキス、私の二学期の修学旅行の調べ物が一つ終わるたびにキス……キスばかりしてきたのは里見くんなので、自業自得なのかもしれない。ほんと、どれだけ好きなの。
ただ、里見くんとするキスは、悪くない。気持ちがいい。
求められている、と体に直に響くからかもしれない。
いいな、キス。
ぎゅって抱きしめてもらうのも、いいな。本当は好きだなぁ。
未だに、里見くんのことが好きなのか、里見くんのキスが好きなのか、いまいちハッキリしないけど。
彼のことを好ましく思い、受け入れたいと願い始めていることは事実。
きちんと愛を示してくれるなら、同じように愛で応えたい。そう思う。
普通の恋愛とは順番が違うのかもしれない。どちらかというと、見合い結婚に近い感覚だと思う。
だからなのか、部屋を出ていくときに、里見くんは言った。
「俺のことは少しずつ好きになってください。小夜先生が俺を受け入れてくれただけで、今は十分です」
少しずつ。少しずつ、好きになろう。焦らなくてもいいのなら、ありがたい。
少しずつ、里見くんを知っていきたい。
その一歩として、「協力者」の佐久間先生から話を聞かなければならないと判断した。
だって、私は、まだまだ里見くんのことを知らない気がするのだ。

