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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

「男の人って、怖いわね」

 月曜日、登校してくるなり、智子先生はげっそりとした顔で微笑んだ。
 その顔も気になるが、それより、智子先生の格好だ。いつもと、だいぶ雰囲気が違う。

 黒地にドットのワンピースは、タイトすぎないが智子先生にピッタリ。赤いベルトがいい差し色になっている。そのベルトがあることにより、大きな胸よりもウエストの細さが気になる。
 髪も、いつものゆるふわではなく、ストレート。ツヤツヤで、スッキリしていて、すごくいい。
 メイクもナチュラルな感じ。

 一言で言うと、今の格好、ものすごくお似合いです。

「素敵です、智子先生! それ、水谷さんからのプレゼントですか?」
「……え、もしかして、私、しの先生を置いて帰った!?」

 私と解散したあと、水谷さんと意気投合してお持ち帰りされたと思い込んでいたらしい智子先生は、顔を青ざめさせて土下座せんばかりの勢いで謝ってきた。

「ごめんなさい! 私、てっきり、店で解散したものだと思い込んでいたわ。しの先生と同じ場所に住んでいるのに、よく考えると解散なんてしないわよね、本当にごめんなさい!」
「あ、いえ、大丈夫ですよ。それより、その服」
「え、ああ、これは、徹さんが選んでくれた服なの。もちろん、自腹よ。私、ワンピースなんて初めて着たけど、案外悪くないわね」
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