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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

「事情が変わったってどういうことですか?」
「今週から、佐久間先生と指導案を作るようになりました。ので、ここにはあまり来られなくなります」
「へぇ。良かったですね」
佐久間先生が指導案を見ることができるように、先週いっぱい使って、部活動の練習メニューを作ったらしい。
テニス部は外部コーチもいるし、この雨でコートは使えないし、心配はないと判断してそちらに任せたということのようだ。
佐久間先生、昨日はそんなこと一言も言っていなかったけど、里見くんをちゃんと指導してもらえるなら、私としても肩の荷が降りるものだ。
佐久間先生から直接指導してもらえるのだから、里見くんにとっては本当にいいことだと思う。
が、里見くんは少しだけ不服そうだ。
「放課後会えない代わりに、朝元気をもらっていいですか?」
「ハグならいいですが、キスはやっぱり駄目です」
「えっ!? なんでですか!?」
いろいろ支障が出るでしょ。
自覚がないとは言わせない。腰に押しつけられているものは、だいぶ硬い。
「スーツの下をそんなにして職員室や会議室に行くつもりですか?」
「……ノートで隠れますよ」
「そういう問題ではなく」
里見くんは渋々といった表情で私から離れ、ため息をつく。
「わかりました。ハグだけにします」
「お願いします」
「でも、俺、小夜先生を見るだけで勃つのであまり意味ないんですけど」
「……そんな情報はいりません」
荷物を机に置いて、ケトルで湯を沸かす。
「コーヒー飲みますか?」
「是非。あ、俺作るんで、小夜先生は仕事してください」
お言葉に甘えるとしよう。
パソコンを起動して、メールをチェックする。土日で緊急のメールや研修用のメールは来ていないみたいだ。
朝の職員会議が始まるまで、あと四十分。
今日は一時間目に五組で小テスト。早めに輪転機を使いに行こう。

