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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

塾講師をしていたときは英語も教えていたけれど、今はもうだいぶ腕が錆びついているだろう。
受験のための英語なら教えられるかもしれないけど、専門教科ではないので無理は無理。
「……先生」
「はい?」
「赤いピアス、似合ってる。かわいい」
一瞬ドキリとしてしまう。
ピアスを変えたことを指摘されたことと、かわいいと言われたこと。
そういえば、ピアスを変えたことに気づいた生徒は、内藤さんが初めてだ。
「ありがとうございます」
「先生はやっぱり赤が似合うよ。出張、気をつけてね。バイバイ」
「さよなら」
やっぱり赤が似合う?
内藤さんも変わった子だ。私のことをよく見ているし、よく信頼してくれている。
たまにすごく熱い視線を送ってくるので、好意を持ってくれているんだろうなとは薄々感じている。
好かれるのはありがたいけど、他の教科も頑張って欲しいなと思う私は、やっぱり「教師」なのだ。

