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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)

食器洗いは苦手なようだったけれど、里見くんは「俺が洗います」とスポンジを譲ってくれなかった。
洗うのが下手だったら、次から私がやればいいかな、と自然に考えてしまう。
「次」を考えるのは、恋人同士なら決して悪いことではないのに、なぜか罪悪感がつきまとう。
たぶん、里見くんが私を想うほど、私が里見くんを想っていない、その温度差を申し訳なく思っているのだ。
けれど、こればかりは時間が必要なもの。少しずつ温度差が解消できればいい。
「明日は早いんですか?」
「六時に起きるので、いつもより少し早い程度ですよ」
「じゃあ、あんまり遅くまではいられないですね」
食器を洗い終えた里見くんは当然のようにソファの隣に座り、ぎゅうと私の体を抱きしめてくる。あったかい。
「小夜」
「はい」
「こっち向いて」
読んでいた資料から視線をずらすと、もう待てないといった表情の里見くんがじいっと私を見つめている。「待て」と言われている犬みたいだ。
「ご褒美が欲しい」
「何の?」
「食器を洗ったご褒美」
ふ、と笑う唇にちゅうと吸いつかれる。資料をテーブルに置いて、私も里見くんの首に手を回す。
何度も唇に触れ、角度を変えて求め合う。
下唇を甘く噛まれ、熱を帯びた目でおねだりをされる。
挿れさせて。
甘い誘惑に、笑みが零れる。
そのわずかな隙間から、舌が押し入ってくる。
「ん、っ、んん」
里見くんがゆっくり体重をかけてきて、ずるりと背中が滑る。
クッションに頭を乗せると、そのさらに上に里見くんの顔。
短く息をしながら、私の体にそっと触れてくる。
「さと、く、こら」
「キスマークつけたいんです」

