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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)

 最寄り駅に着いて、さて、どうしようと思案する。
 雨はまだ降っている。スーツケースは防水だし、お土産も誕生日プレゼントもカバーのおかげで濡れないようにはなっているけれど、さすがに傘を差しながらは厳しい。
 慣れないヒール付きのパンプスも地味に痛い。靴ズレかな。スニーカーを持っていけばよかった。次回は持っていこう。
 やっぱりタクシーかなぁと思って乗り場へ行こうと傘を差したら。

「小夜先生」
「えっ、あ、里見くん!?」

 普段着の里見くんが傘を差して立っていた。あれ、待ち合わせはまだ先じゃ?

「荷物、持ちますよ」
「え」
「遠慮しないで」

 う、うわぁ、ありがとうございます!
 なんて、気が利く男の子なの!?

 スーツケースと職場へのお土産を里見くんに渡すと、私は本当に嬉しくなる。
 こんなふうにいたわってくれるなんて、ありがたい。

「ありがとう、里見くん!」
「どういたしまして」

 里見くんは目を細めて微笑んでくれた。
 独身寮までは徒歩十分ほどだ。ちなみに、駅から学園までは十五分くらい。駅から学園に向かう道にはコンビニや軽食店が多くあり、生徒たちもよく利用している。が、独身寮までは、違う通りを使ったほうが早い。
 里見くんは私の足元を見て、ゆっくり歩いてくれる。マメができたのか、足が痛い。あとで絆創膏貼らなきゃ。
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