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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)

「きたない、汚いからっ!」
「小夜の体の中に汚いところはないよ。ぜんぶ綺麗だよ」

 足の指を舐(ねぶ)られている、というのはかなり、気持ちいい。初めて知った快感だ。

「爪先は、崇拝。足の甲は、隷属」
「キスじゃなくて、舐めてるっ!」
「似たようなものだよ」 

 宗介は指先から足の甲をじっくり舐め、一息ついたと思ったら、もう片方の足首を掴んできた。
 そっちも舐めるの!?

「やっ! やだ! だめ!」
「小夜、『やだ』と『だめ』は禁止」
「なんでっ?」
「傷つくから」

 端的に、一番効果的な言葉を選ぶのが宗介らしい。傷つくと言われたら、傷つけるわけにはいかないと考えるのが私だ。

 この男は、本当に「篠宮小夜」という人間を理解している。

 むぎゅ、と手で口を押さえると、「口押さえるのも禁止」ときた。
 ……私は一体どうすればいいの!?

「小夜、声は我慢しなくていいから」

 爪先、甲、足首、ふくらはぎ、膝、太もも……キスを繰り返し、舌で舐めながら、少しずつ宗介は上ってくる。
 太ももは「見えないところ」だと判断したらしく、何度も吸い付いて赤い痕を残す。
 宗介は満足そうだ。

「っあ! や、だめっ!」
「十三回目」

 カウントしなくてもいいのに、宗介は呆れながら「やだ」と「だめ」を数える。
 足の付け根の柔らかい部分を吸われたら、誰だって同じ反応をするだろう。

 宗介は、酷い。
 足ばっかり舐めて、たまにキスをして、キャミソールの下の肌に痕を残して、決定的な快楽を与えてくれない。
 じわじわと熱が高まり、発散できなくて、本当に辛い。
 ショーツはびしょびしょだし、触れて欲しくてたまらないところに、触れてくれない。しんどい。
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