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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第3章 しのちゃんの受難(二)
梓の笑顔が怖い。
里見くんの動機が、怖い。
頭の中が真っ白になる。
え、どういうこと?
「……なに、それ」
「初耳だった? まぁいいけど。少なくとも、あの男よりはずっといい男だと思うわよ」
梓は何かの資料に目を落としたあと、硬直したままの私に、仕事を言いつけた。
「だから、小夜が見極めて欲しいの。里見宗介が学園に必要かどうか。副担なら、接触もしやすいだろうし、うってつけだと思う。拒否したら、木下先生に頼むだけだから構わないけど」
梓の言葉を理解する。教育実習がそのまま里見くんの採用試験になるということだ。
「……学園に必要かどうか?」
「リストを作ったから、この通りにチェックしてちょうだい。ちなみに、里見宗介だけじゃなくて、化学の大石先生の後任として実習生の稲垣亮一も視野に入れているの。そちらも、もう他の先生にお願いしてあるわ」
「へぇ……行動が早いね」
「採用試験を大々的に行うと、お金も時間もかかるからね。優秀な学生を実習期間中に確保できるなら、その必要がないから合理的だと思うわよ」