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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第3章 しのちゃんの受難(二)
確かに、採用試験に殺到する免許保持者の数は多い。私たちのときはそうだった。二百人近く応募してきた中、採用枠はただ一つだというのだから、狭き門だ。
教師の立場から見ると、二百人に試験を実施して、さらに面接をして、模擬授業をしてもらって……となるわけだ。何日もかかる地獄だ。
それが短縮できるなら、ありがたい話だ。乗らない手はない。
「やってもらえる?」
「はい、やります」
拒否したら、その採用試験の担当にされそうな気がしている。親友にも容赦のない仕事を任せてくるのが、玉置梓学園長代理。たぶん、承諾するのが正解だ。
「じゃあ、採用か不採用が決定するまでは、口説き落とされないように注意しておいてね」
梓から資料を受け取りながら、冷や汗をかく。
あの里見くんの挨拶の話は、どこまで駆けめぐっているの!?
「教師同士の恋愛は禁止しないけど、実習生の間はまだ駄目よ。大学からお預かりしている子たちだから、手を出すのは終わってからにしてちょうだいね」
梓の笑いを含んだ声色に、私は憤慨する。
本当に、もう!
みんな、他人事だと思って!
当事者の私にとっては、面白くも何もない状況なのに!!