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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第3章 しのちゃんの受難(二)
「……ありがとう。里見くんの気持ちは、嬉しいです」
「結婚してくれますか?」
「それはまだ」
「わかりました。待ちます。あ、一日一回抱きしめてもいいですか?」
「……なぜ?」
「小夜先生の温もりを覚えていたいので」
「……却下します」
「そう言われると思っていました」
ふ、と笑みがこぼれる。ははは、と里見くんからも声が漏れて、私たちは笑い合う。何がおかしいのかわからないけれど。
最後に礼二とこんなふうに笑い合ったのは、いつだったか。思い出せないくらい、お互いに無関心だったんだなと改めて思う。
「あ、でも、小夜先生」
「はい」
「俺は、先生の心から先に手に入れたいと言いましたが、訂正します。体も積極的に狙っていくので、油断しないでください」
「へ」
「こんなふうに」
ぐっと腰を抱き寄せられて慌てたところへ、影が落ちてくる。
ヤバい、と思ったときには既に里見くんの顔が目の前にある。
思わず、両手で彼の口を塞ぐ。
柔らかい唇が手のひらに当たる。ぞくりと背中が粟立つ。
「油断したらキスしますから」