この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第3章 しのちゃんの受難(二)
くぐもった声しか聞こえなかったけれど、里見くんの声が笑っている。
これは、もしかしなくても、貞操の危機!?
手のひらに熱くてぬるっとした感触。「ひあ!」と驚いて手を引っ込めようとすると、舌を出した里見くんがニヤニヤ笑っている。
な、なな、舐めた! 舐めたのね!?
里見くんは私の手をつかみ、さらに手首へ唇を落とした。舌は這わない。柔らかく熱い唇に、手首の薄い肌がぴくりと反応する。
「油断大敵ですよ、小夜先生。俺はしつこいですからね。頑張ってください。ちなみに、手のひらへのキスは『懇願』で、手首へのキスは――」
ようやく私を解放して、里見くんは笑った。
「『欲望』という意味があります」
あなたが欲しい――。
彼の、燃えるような熱い気持ちにどう答えればいいのか、私にはわからない。
わからないのだ。