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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第3章 しのちゃんの受難(二)

「稲垣くんが先生になりたいなんて、意外でした。採用試験受けるんですか?」
「誠南学園で採用してもらえればいいなとは思ってるけど、公立の教員採用試験も受ける予定で動いているよ、一応」
「そうですね、そのほうがいいですね。私も近隣の県の教採受けましたし、友達も大阪と山梨を受けて山梨に採用されましたよ」

 独身寮まで送ってくれると言うので、稲垣くんの言葉に甘えることにする。稲垣くんの帰り道の近くだというので、断る理由がない。

 私は自転車を押しながら、稲垣くんと歩く。
 ちょっとゆっくりなのは、私の歩幅に合わせてくれているのかな。
 生意気だった子がこんな紳士になって……!
 気分は姉か母親だ。

「しのちゃんは、まだ高村先生と付き合っているの?」
「え?」
「俺も大塚塾でバイトしてるの。数学と理科系の科目で。だから、知ってる。いろいろ」

 高村先生、は礼二のことだ。大塚塾で正社員をしている、私の元カレ。
 講師として生徒を教えることもあるらしいが、経営のことも考える立場になったので、バイトの稲垣くんが知っていても不思議ではない。
 ただ、稲垣くんは「いろいろ」のところを強調した。何か言いたいことでもあるのだろう。まぁ内容は聞かなくても何となくわかる。

「いろいろ?」
「あの人、かなり女癖悪いよ。先生や生徒に手を出したのも、一度や二度じゃないもん。しのちゃんがいるのに、最低」
「……知っていますよ」

 厳密に言うと、知っていた、だ。過去形。もう、終わったことだ。

「知ってて付き合ってたの? しのちゃん、そういうのが好きなの?」

 街灯がまばらに照らす細い道を行く。右手側の塀はまだ学園のもの。学園の前に伸びる大通りではないので、街灯も少ないのだ。
 生徒はほとんどこの道を通らない。駅までの近道でもないし、コンビニもない。少し寂しい道なのだ。
 だから、いつもは自転車で帰る。徒歩だと怖いから。

「忙しくて、彼のことを蔑ろにしすぎちゃったんです。私も悪かったので、別れましたよ」
「……え、じゃあ、しのちゃん、今フリー?」

 既視感。

 なんだ? 実習生の間では私が彼氏持ちかそうでないかの賭け事でも流行っているの?
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