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誰よりも君を愛する
第35章 パパ
亜矢子のおねしょが1ヶ月も続いた頃、良雄の父親から電話が来た‥
『亜矢子、悪いけど今夜父さんと3人で食事する事になった‥母さんが旅行でいなくて自分で作るの面倒らしいんだ。付き合ってくれるかな?』
『わあ~お義父さんと?嬉しいわ。うんとお洒落して行っちゃお(笑)』
必要以上に喜ぶ亜矢子を不思議に思いつつも自分の父親を好いてくれるのは良雄も嬉しかったし亜矢子の気分転換にもなりそうだと思った。
良雄の父親と待ち合わせたのは小さなお店だが上等な肉を売りにしているステーキハウスだった…
亜矢子を真ん中にしてカウンター席に座った3人の前でステーキ肉と色とりどりの野菜が焼かれた‥
『どう?亜矢子さん?』
『とっても美味しい‥こんな美味しいスーキ初めてです(笑)』
亜矢子と義父はワインを飲んだせいか話しも弾み、すっかり打ち解けた様子であった。
『亜矢子さん、良雄は良くしてくれているかい?何を考えてるか解らない時もあるだろう?』
『いいえ、お義父さん、とっても優しくしてくれて、私幸せです。』
『なら良かった‥仲良くやって下さい。』
『はい。』
『ところで‥亜矢子さんはニンジン嫌いなのかい?』
『‥え?‥ちょっと苦手で、すみません‥』
亜矢子はステーキに添えられたニンジンのグラッセを残していた。子供の頃は苦手だったらしいが今は普通に食べている。
なのに今日に限って残している。まして今日は義父のご馳走とあらば普段なら嫌いな物でも我慢して食べるような性格の亜矢子が、そんな気遣いもなく残している‥
『僕が食べてあげ‥』
『ダメだよ、亜矢子さん。お店の方に失礼だ。嫌いなら焼く時に言わなくちゃ‥それに大人が好き嫌いをしていたら将来子供にどう教えるのかな?せっかくもう出されてるんだからキチンと責任もって食べなさい』
良雄の父親の優しい叱責に亜矢子は驚き、そして素直に従った‥
『‥美味しい、お義父さん、このニンジンとても甘くて美味しい‥』
『ほらね、美味しいだろう?‥おいおい、泣くほど美味しかったのかい?‥参ったな‥おい、良雄!!』
亜矢子はニンジンを噛みしめながらポロポロと涙をこぼしていた。しかしなぜかその顔は少し嬉しそうに笑っていた。