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誰よりも君を愛する
第36章 愛憎
良雄は亜矢子を解放するとベットに寝かせてやった‥
『父さんと話してくる‥』
良雄はそれ以上何も言わず黙ってリビングに向かった‥
『何だあれは?説明しろ‥』
『‥‥』
『お前は亜矢子さんを愛していたはずだろう?しかし、あれは愛のある行為とは思えん‥なぜだ?』
その時、服に着替えた亜矢子がリビングにやってきた‥
酷く泣いたせいで目は赤く目蓋は腫れ上がり、鼻もテープで持ち上げられていたせいで真っ赤になっていた。
そして一晩中呻いていたせいで声がかすれ、固定されていた手足を引きずりながら床に崩れ落ちるように座った‥
『お義父さん‥良雄さんを怒らないで下さい‥私が悪いの、私が‥私が‥』
『なぜだっ?あんな事されて良雄を庇わなくていいんだよ‥?』
『私が‥夕べお義父さんに叱られて‥嬉しくて‥それで、それで、‥』
『‥もういいよ、亜矢子。父さん、父さんに嫉妬した。僕が悪いんだ‥』
『嫉妬した?‥‥馬鹿かお前は!!すまない、亜矢子さん、良雄と二人きりにしてくれないか‥』
『はい‥だけど悪いのは私なんです。良雄さんを叱らないで下さい‥お願いします。』
亜矢子は痺れの残る足を引きずりながらまた寝室へ戻って行った‥
二人きりになって良雄の父親は静かに話し始めた‥
『嫉妬した?亜矢子さんのファザーコンプレックスの事でか?‥あれは私に任せろと言っただろうが‥』
『だけど‥』
『馬鹿者!何が嫉妬だ!どんなに愛情を注ごうが亜矢子さんのファザーコンプレックスはお前では満たしてやれない。私にだって100%満たしてやることは出来ないよ‥求めているのは父親なんだから。私はあくまでも義父なんだ。ただお前よりは言葉の重みが違うだろうな‥
だからあの子の心に響いた‥』
『ああ、わかってる‥わかってるつもりでいたのに‥』
『夫がどんなに愛情をかけようと寂しさは埋められても父親代わりにはなれない。根本的に違うんだ。だからお前には夫の務めを果たせと言ったのに。
お前はまだ子供がいないから本当の親心が解ってないのだ。私があの子を本当の娘として可愛がり、あの子が私を父親として慕ってくれる、そんなものに嫉妬しやがって‥お前、離婚も覚悟してろよ』
『ああ、わかってる‥』