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誰よりも君を愛する
第36章 愛憎

『お前がそんな小さい人間だったとはな‥反省すべきはお前だ』


良雄の父親は亜矢子を気遣い、会わずに帰った‥

良雄は手土産のケーキを持って寝室に向かった‥部屋では亜矢子が泣きながら待っていた。

『ぁ‥亜矢子‥』

『旦那様ごめんなさい‥ごめんなさい‥』

『お腹空いただろう‥ケーキ貰ったよ』

良雄は黙ってケーキをフォークでひと口掬うと亜矢子の口に運んだ。

『ぅぅう‥おいひぃ‥』

亜矢子はポロポロ、ポロポロ、涙をこぼして泣き出した‥
良雄はそっと亜矢子の頭を胸に引き寄せて抱いた‥

『旦那様ぁ‥』

『わかってる‥でも僕は謝らない‥』

『はい‥』

良雄は謝らない‥そう亜矢子に断言した。
確かに、大切な女性にすべき事じゃないのは解っていた。

だけど、謝ったら今まで亜矢子に注いだ愛をも消えてしまいそうに思えた‥

『何も言うな‥ずっとそばにいてくれ‥』

『はい』

良雄は亜矢子を抱きしめて眠った‥
お互い結婚して初めて別々の夜を過ごして、亜矢子は良雄のいない寂しさに身を焦がし、
良雄は自分の中の亜矢子の存在の大きさを知った‥

今日の話はその後、話題になることは一度もなかった。

言葉では伝え合わなかったが
お互いに何があっても絶対に離れないと心に固く誓った出来事だった‥


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