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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!
 
「ねぇ、鹿沼ちゃん。明日、どこの海になったの?」

 衣里が会計をしている間、既に会計を終えたあたしは、杏奈の質問に首を傾げる。

「まだ秘密だって。着いてからのお楽しみは続行中」

――渉さんに、海とホテルを任せてもいいかな。全員一緒に行けるものを手配するって。

「シークレットの行き先に皆で行くというのも、ドキドキしちゃうね」
「そうだよね。あたしは、杏奈が相手にどちらを連れてくるのか、明日にならないと教えてくれないっていうのも、ドキドキなんだけれど」

 しかし杏奈は意味ありげに笑うだけだ。

 ロリータファッションを貫く杏奈に、人々の視線が集まる。
 こんなにピンクのフリフリのプリチー杏奈なのに、服を脱いだらつるぺたロリどころか、凹凸激しいダイナマイトボディだなんて、反則すぎる。
 
「秘密の場所まで、全員で行けるものって言ったら、バスなのかな。あのひとに、バスって合わないけれど」

 杏奈に同意する。
 渉さんは、忍月財閥を背負う長男だ。
 朱羽同様、親にはかなり苦労していたひとだが、ハイスペックな環境で育ってきた彼は、庶民の生活とは縁遠そうだ。

「まあ、沙紀さん曰く、彼女の〝教育〟で、金銭感覚も大分マシになったみたいだし」
「じゃあ、やっぱりバスかなあ。バスでどこまで行くんだろう。鎌倉あたり?」
「んー、あたしもカップル気分を盛り上げるために、湘南とか茅ヶ崎とか逗子とかかなって思うんだけれど」
「メジャーすぎない? もっとあまり人がいないような穴場かも。案外神奈川ではなくて、千葉とか茨城かも知れないし」

 杏奈とあれこれ思いを馳せていると、衣里が戻ってくる。

「衣里は、どこの海だと思う?」
「あの専務なら、小笠原諸島とか海が綺麗なところに連れて、彼女を喜ばせる気もする」
「ああ、それもアリかも」

 気分は女子会の延長のお泊まり会。

「海、楽しもうね」

 そう衣里は、無邪気な笑みを見せるけれど。

 衣里、あたし達と遊ぶことを楽しみにしているようだけれど、あたし達も海も、衣里と結城のための演出でしかないこと、わかっているんだろうか……。 

 そして……どんなに海でも、あたしは遊べない傍観者。

 いいもん、海は逃げないし。
 心配事がなくなったら、皆とまた遊びにいけるし。
 
 ……妊娠していたら、それがいつになるかわからないけれど。
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