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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!
 
「忍月のジェットはしょぼくて、居心地悪いな。これなら向島の方が大きいし、乗り心地がいい」

 そう毒を放つのは、向島財閥の御曹司。
 嫌だったら乗らなきゃいいのに、備え付けのワインセラーから取り出した赤ワインボトルをグラスに注ぎ、優雅に口に含んでいるあたり、居心地悪そうには見えない。思いきりリラックスしている。

 ……実は三上さんが声をかけたのは木島で、それも『シークレットムーンの慰安旅行にしたいから』という、恋愛感情抜きな理由だった。

 それをなぜか、木島が向島に自慢したらしく(電話番号をどこから仕入れたかわからない)、向島は傷ついていたらしい。
 そこに、三上さんもいるからお前も来るかと渉さんが誘ったため、彼は特別枠での参加となった。

 三上さんと話したいみたいで、ちらちらと視線を送りつつ、向かい側の席が空いているアピールをしている。
 負けじと木島も同じように、向かい側が空いているアピールをして、缶ビールを飲んでいる。

 けれど三上さんは、陽菜と真下さんと沙紀さん……女性陣とソファに座り、相づちを打ちながら持参したパソコンでプログラムを組んでいて、男ふたりに見向きもしない。ちっとも。片想いしている身には、凹むレベルで。

 やがて相手にされない二人は、いかに自分は三上さんに愛されているのか自慢しながら酒を飲み続け、そこに渉さんが乱入し、煽っているのか凹ませているのかわからない状況が出来上がる。

 そして俺は、いまだタメ口を強いる結城さんとふたりで座り、既に用意されていた沖縄のガイドブックを広げて、どこに行こうかと計画を練っていた。
 
「海でキャッキャもいいけどよ、折角本場に来たのなら、ダイビングやシュノーケリングだけじゃなくて、カヌーカヤック、パラセーリングもしようぜ。この洞窟体験とか、ウミガメやいるかと泳ぐっていうのも、女達喜ぶよな。俺、山男だからサーフィンも興味あるんだけど……」

 俺はこほんと咳払いをして、釘を刺すことも忘れない。

「……結城さん。宿泊は一泊。すべて遊び倒したい気持ちはわかるけれど、それによって本来の目的を忘れないようにね」
「うう……」
「渉さんがジェット機まで用意して、結城さんの後押しをしているんだ。女性にとって最高のシチュエーションでどう告って成功させるか、ちゃんと頭の中でイメージ出来てる?」
「ぐぐ……」

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