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えっちな姉は俺の成長を喜んでいるらしい
第10章 エピローグ 未来へのウェディングドレス
俺は駅から学校までの道を歩きながら、夏の名残を包有する日差しに目を細めた。
「おっーす!」
そんな俺の横を、見知った顔が横切る。
「間嶋……? 何急いでんの?」
俺は通学路を駆け抜ける間嶋の背中に声をかけた。
「今日から新学期だろ!? だから多分持ち物検査がある!! 先生が教室に来る前に『コレ』なんとかしないと!!」
間嶋は振り返りながら、手に持った通学鞄を掲げた。
俺はそんな間嶋の様子に、やれやれと肩を竦めた。
「先輩、おはようございます」
そんな俺の横に、一人の女子生徒が並んだ。
「お、おはよう」
東堂だ。
「新学期、ですね」
「そうだな。って言っても、部活で何度も来てるからそんなに新鮮味もないな」
「あはは、そうですね」
そんな話をしながら通学路を歩く俺達を、別の女生徒が抜かしていく。
「ねぇ。佐久間先生、学校来なくなっちゃったんだって」
「聞いた聞いた。確か……」
どうやら佐久間先生が学校に来なくなった話は、どうやら夏休みに活動がない部活の生徒や、帰宅部の生徒にまで話が及びはじめたようだ。
しばらくはこの話で持ちきりになるかもしれないだろう。
俺自身はというと、あれ以来佐久間先生には会っていない。
どこにいて何をしているか、何故姿を消してしまったのか、真実は一切分からない。
「そういえば佐久間先生、どうしたんでしょうかね? 心配です」
「……そうだな」
佐久間先生のこと、東堂に話すべきか……。
未だに俺は迷っていた。
そんな俺は、横に並ぶ東堂を見下ろす。
彼女はまっさらな……少なくとも傍目にはそう見える笑顔を浮かべている。
「先輩」
そんな考えを巡らす俺の目の前に、ふと東堂が回り込んだ。
「私、決めたんです。いつか先輩が振ったことを後悔するくらい、魅力的になるって」
「え?」
俺の耳にその言葉が入って彼女を見上げた頃には、既に東堂は校舎へ向かって走り出していた。
その駆け足は力強く、未来へ向かっているかのようだ。
少なくとも俺の目にはそう見えた。
……後でちゃんと、話をしよう。
もしも彼女がもっとちゃんと真実を知りたいのなら、俺は彼女に全てを話さなければいけない義務がある。
あまり思い出させてしまうのもよくないとは思うが、彼女の望みを極力聞かなければ。
俺はそう考えながら校門をくぐった。
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