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えっちな姉は俺の成長を喜んでいるらしい
第4章 大会の後には!!
「それでは、矢作くんに大きな拍手をお願いいたします」
原稿用紙に書かれた文章を読み上げた俺は、同級生と保護者からの拍手に包まれながらぎこちなく席に座った。
『お父さん・お母さんへ』と題された俺の作文であるが、その文章を向けた相手は今ここにはいない。
それどころか、その文章は本当にその相手に送った言葉が書かれているのか、自分でも疑問だった。
俺は結局、提出期限ギリギリでこの作文用紙を提出した。
普段は身近にいない相手に対しての日頃の感謝など思い浮かぶはずもない俺は、適当に当たり障りのない言葉を並べたように記憶している。
先生は俺の作文に対して『上手に書けましたね。クラスで一番上手いかもしれないよ』と評していた。
一番かどうかはさておき、実際に俺の文章は上手かったかもしれない。
けれど、その褒め言葉も、拍手も、受け取っても虚しく感じてしまうのだ。

あの時も……そして今も、俺は常に何か物足りなさを感じながら、拍手と喝采を浴びているのである。



「おい、矢作!! お前のねーちゃんが客席にいるぞ!!」
「……は?」
それはもうすぐ俺が出場する100m平泳ぎが始まる少し前のことだった。
間嶋はわざわざ俺達の控え室にやってくるなり、そのことを告げた。
俺はその声で意識を過去から今へと戻らされたのだ。
それにしても……なんだって?
「よかったじゃねーか。ねーちゃんにかっこいいところを見せるチャンスだぜぇ」
ひどく下卑た声音と笑顔の間嶋ではあるが、そんなことに構える余裕など、俺にはない。
「それ、どの辺りで見た?」
色んな意味で表情をひきつらせる俺に、間嶋は興奮気味で俺の腕を引っ張った。
「ほら、まだお前の番まで時間はあるだろ? せっかくだから見に行こうぜ」
俺はそんな間嶋にされるがまま、控え室を後にした。
背中に他の出場者達が、控え室で騒ぐ俺達に非難の目を向けているのを感じながら……。
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