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えっちな姉は俺の成長を喜んでいるらしい
第5章 俺の気持ち!!
最初に口を開いたのは、姉貴と連れ立って歩いていた男の方だった。
思ってたより高めの声である。
しかしながらその男を間近で見てみると、柔和なたれ目と柔らかそうな毛質の髪の毛が相まって、むしろ草食系なタイプを連想させる。
そのため、むしろこのくらいの声の方がちょうどいいのかもしれない。
俺の妄想の方が先走りすぎていたのだ。
「弟だ。私達の前に立ちはだかっている理由は分からないけれど」
姉貴は男を見上げながら答える。
その声には明らかに不満が混ざっている。
「あぁ、君がね」
男の顔がぱっと明るく晴れる。
「こんにちは。僕、村田樹って言います。矢作さんと同じゼミで勉強してるんだ」
村田樹と名乗った男は、一歩前に出ると俺と視線を合わせるように、少し腰を折った。
「ゼミ……?」
まさかこんなすぐに男の素性が分かるとは思っていなかった俺を拍子抜けさせるには十分だった。
「そうだけど。で、お前はなんでここにいるんだ?」
「えっーと……それは……」
姉貴の冷めた視線が痛い。
いくら知ってる人間だとしても、確かに俺の行動は不審なものだろう。
「いや、たまたま見かけたら、随分と仲良さそうだったから、恋人かなんかかと思って」
そんな俺であるから、ストレートに尋ねた。
ここまで来たら、そうするしかあるまい。
「恋人……?」
俺の言葉に、二人は豆鉄砲を食らったような顔をした。
しかしその直後、二人はほぼ同時に吹き出した。
「あれ、そう見えちゃったかな? 大丈夫、そんなんじゃないから」
村田さんは俺ににっこりと微笑んだ。
「ほ、本当ですか、それは?」
散々思い悩んだあげく、カッコ悪く飛び出してしまった手前、俺は引き下がるタイミングを完全に逸していた。
それが余計に惨めさを増させるというのに……。
「確か矢作さん、彼氏募集中じゃなかったっけ?」
「……村田くん、その話はしないの」
姉貴は、村田さんにむくれている。
……そんな表情、俺だって見たことがないというのに。
「それに僕、男の人が好きだし」
「……ん? 男の人?」
それはあまりに突然の告白であった。
そんな突然の告白を、あまりにあっさりと言うものだから、理解するのに時間が掛かった。
「村田くん、それ言っていいの?」
姉貴にとっても、それは予想外のことであったらしい。
ただ姉貴の反応を見るに、それはどうやら本当のことらしい。
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