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夜伽月 よとぎづき 
第7章 秘密
「で…でも。今は違うでしょ?」

笑いながら遺体を陵辱し続けている石打ち達の声を背中で聞いていた。思わず身震いした月。慌てて清賢の話に集中する。

…血を見て興奮するぐらいなら、ぎりぎりフェチズムで済まされるような気もするけど。


「人を殺めた事があるのです」

「お…和尚が?」

「はい」

名のある武家の次男として、歳の離れた兄と妹の3人で育った清賢の子供のころの楽しみは、屋敷の近くにあった医者の家に来る患者の治療を見ることだった。大人達はそんな清賢をみて、武家に生まれたのに医者の素質があるのかもねぇと話していた。

「温かな血に触れられる、血が見たい…と思ったのです。そして私は、人を切ってみたくなったのです」

…血が見たいただそれだけの為に人を斬る。

やはり月には理解できなかった。

そして不気味なことに事件が起き始め、清賢の身に覚えの無い辻斬りが一気に流行し、それは直ぐに町の噂となった。


「夜更けに歩いていると辻斬りに合うと言う噂が出始めて、誰も外を歩かなくなったのです」

辻番と呼ばれる、幕府から辻斬りを監視するもの達が躍起になって犯人を探し始めた。その辻番すら斬られることもあり、さらに混乱を招いた。

「私はそれでも止められなかったのです」

悲痛な面持ちで、清賢は続けた。

初めに気がついたのは妹だった。夜な夜な家族に内緒でこっそりと出かける兄、清賢の姿を何度も見かけた。そして辻斬りが出た後、大騒ぎの大人達に混じって決まって必ず兄が医者の屋敷にいる事が多かったからだ。

「妹は、私を疑い何度も止めようとしました。けれど、私は誤魔化していたのです。その頃には、自分の衝動がどうにも止められなくなっておりました」

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