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夜伽月 よとぎづき
第7章 秘密
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ーーー シュッ…バシッ。
洞窟奥から矢が飛んできた。
そしてその矢は、轡の背中に深々と刺さり、その薄く痩せた胸を貫いていた。きゃっと女達の間から悲鳴が漏れた。どうやら洞窟の物陰から射られた様だ。
「ううっ」
轡は小さな声をあげるとゆっくり前のめりに倒れた。
「哀れな女だ」
一瞬の事でどこから矢が射られたのか分からない皆は、身を縮め周りを見回した。鬼鎧は焚き火が照らさない暗闇をじろりと睨んだ。
「おいっ!何故こいつを殺したっ?」
不機嫌に怒鳴る鬼鎧を恐れもせずに、野風はふふんと鼻で笑いながら暗闇から出てきた。
「轡は、こんな身なりの癖に、鬼鎧様に惚れてた。きっと嫉妬したのさ」
じろりと憎しみを込めた目で月を睨みながら言った。
「な…何だと?」
鬼鎧の怒りが一瞬で戸惑いに変わった。
…嘘だ。
月は野風の顔を見て確信した。
「あたいや軛、鬼鎧様との交わりをいつも盗み観ていたんだ」
観たく無くても、まるで獣の様に好きな所で行為に及ぶので、いつも数人の男達は覗き見していたが、その中に轡を見かけた事は一度も無い。
「そ…そうだったのか?」
…体裁の良い口封じ。
きっと轡に頼んで野風は、毒を盛ろうとしたに違い無い。嫉妬だとしたら、それこそ野風か軛の方が先に殺されて居てもおかしくない。
…そうよ。私が来る前にできたはずだもの。
「あたいか軛にその罪を擦りつけるつもりだったんだろう」
野風は、落ち着いた声で言った。石打ちが、どこからとも無く現れて、轡の身体を引き摺る様にして洞窟から出て行った。あの夜の川に一人で行くつもりなのか、考えただけで月はぞっとした。
「ふーむ…女は良く分からんなぁ」
鬼鎧は不精髭を撫でながら少し考える素振りを見せて居たが、暫くすると何事も無かったか
のように、月の看病は清賢に任せると言い、野風と洞窟の奥へと消えた。
洞窟奥から矢が飛んできた。
そしてその矢は、轡の背中に深々と刺さり、その薄く痩せた胸を貫いていた。きゃっと女達の間から悲鳴が漏れた。どうやら洞窟の物陰から射られた様だ。
「ううっ」
轡は小さな声をあげるとゆっくり前のめりに倒れた。
「哀れな女だ」
一瞬の事でどこから矢が射られたのか分からない皆は、身を縮め周りを見回した。鬼鎧は焚き火が照らさない暗闇をじろりと睨んだ。
「おいっ!何故こいつを殺したっ?」
不機嫌に怒鳴る鬼鎧を恐れもせずに、野風はふふんと鼻で笑いながら暗闇から出てきた。
「轡は、こんな身なりの癖に、鬼鎧様に惚れてた。きっと嫉妬したのさ」
じろりと憎しみを込めた目で月を睨みながら言った。
「な…何だと?」
鬼鎧の怒りが一瞬で戸惑いに変わった。
…嘘だ。
月は野風の顔を見て確信した。
「あたいや軛、鬼鎧様との交わりをいつも盗み観ていたんだ」
観たく無くても、まるで獣の様に好きな所で行為に及ぶので、いつも数人の男達は覗き見していたが、その中に轡を見かけた事は一度も無い。
「そ…そうだったのか?」
…体裁の良い口封じ。
きっと轡に頼んで野風は、毒を盛ろうとしたに違い無い。嫉妬だとしたら、それこそ野風か軛の方が先に殺されて居てもおかしくない。
…そうよ。私が来る前にできたはずだもの。
「あたいか軛にその罪を擦りつけるつもりだったんだろう」
野風は、落ち着いた声で言った。石打ちが、どこからとも無く現れて、轡の身体を引き摺る様にして洞窟から出て行った。あの夜の川に一人で行くつもりなのか、考えただけで月はぞっとした。
「ふーむ…女は良く分からんなぁ」
鬼鎧は不精髭を撫でながら少し考える素振りを見せて居たが、暫くすると何事も無かったか
のように、月の看病は清賢に任せると言い、野風と洞窟の奥へと消えた。
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