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夜伽月 よとぎづき 
第7章 秘密
「ほぼ野風殿で間違いは無いでしょう。そして轡殿に手伝わせた…殺したのは口封じでしょう」

…思った通り。

洞窟にいる限り、命を狙われ続けただろう。

「恨みを買うとは、何ともお前らしい」

透は、事あるごとに月に突っかかった。

「食い意地が張ってるからその様な罠に嵌るのだ」

「ちょ…食い意地が張って無くても毒を盛られたら、誰だって死にそうになるわよっ。失礼ね」

月はぐったりとしながらも、言い返した。

「何とも…騒がしい死に損ないだな」

透は、くすくすと笑い出した。

「し…死に損ないですって?清賢和尚が助けてくれたのに、あなたのその毒舌で死にそうだわっ」

月は目を閉じたまま透に言い返した。

「清賢殿もお疲れであろう?…私は、お前などどうでも良いのだが、仕方がない。その大女を私が運ぼう」

清賢が答える前に月を清賢の腕から軽々と抱き上げた。

「そ…んなに嫌なら別に良いわよ」

懐かしい香りが、月の鼻をくすぐった。

「皆に迷惑を掛けて置いて、本当にふてぶてしい女だな。お前は」

ふたりが小声で口論をしている間に、周りが少し拓けて来て、獣道に突き当たった。そこには2頭の馬が居て、透をみるとふるふると鼻を震わせ優しく低い声で嘶いた。

透は月を前に乗せると軽々と馬を走らせた。

「そろそろ洞窟も騒がしくなる頃であろうな」

「ええ」

清賢は、小坊主と馬に乗り透の後をついていく。馬から伝わる振動と熱で、月はふわふわとした気分になった。

「おい…まだ半刻は掛かるぞ、しっかりと掴まれ。振り落とされるぞ!」

そして時折触れる木の葉は、夜露に濡れていた。

「うん…でも…暖かくて、冷たくて…気持ちが良い…の」

身体は眠気に覆われて、抗うことが出来ない。

「夜伽…寝てはいかん」

透は、そんな月に声を掛け続けた。
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