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第1章 波

つい数秒前、出勤予定の15分前だった。
事務室のある８階までエレベーターで上がった私は、エレベーターホールのすぐ右手にある女子ロッカールームに入ろうとしたところをこの男に捕獲された。
そのままいくつかの事務室のドアが並ぶ長い廊下を無言のまま引きずられる。
ただ立っているだけでも目立つ男の険しい表情と、引きずられて抗議の声を上げる私の様子を何人かすれ違った同僚が吃驚した表情で見ていた。

エレベーターホールから左右に伸びる廊下を左に進んで最奥の事務所ドアを勢いよく開け、吃驚した事務官が腰を浮かせるのを睨み付けるように目線で制し、更に奥の個室に入ると前室とを仕切る硝子のパネルをホワイトアウトした。