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二兎を追って落ちた穴
第2章 元彼タクヤ
大学時代の男性の一人のタクヤがまさに筆頭で、交際中、私に肉体的な抵抗は許しませんでした。自衛のためには部屋の鍵を閉め、スマホの電源を切り、お気に入りの音楽を大きめに流して、アイマスクをしてベッドに入りました。馬鹿げていますね。しかしタクヤの馬鹿加減は私以上ですから、もし部屋に入られればあちらのペースに引きずり込まれることは明らかでした。元はといえばあちらから誘われた関係です。単純な女と思われたのでしょう。深入りする前に、すぐに分かれることにしました。形だけは。

恐ろしいのは、彼と私の欲求がちょうど嚙み合った時です。交際当時もそれを何より恐れました。別れてからも、何かこう女性への嗅覚があるのか、不満が溜まった時には、以心伝心のように情熱的な連絡がありました。私に特定の相手がいてもいなくても。思い出したくもないほどいやらしい夜が何度もありました。時には、巧みな誘導で私から求めるように仕向けられ、タクヤの部屋に招かれ――ショーツを付けずに来いだとか、そして散々なぶられました。部屋には何人も女性を引きずり込んでいるのでしょうが、レンと同様清潔なものです。違うことといえば、女性のための髪留めや複数銘柄の化粧落とし、そして行為のためのゴム、ローション、長丁場を助ける飲料水、さらにトリップを促す音楽等。夜を過ごすための全てが揃っており、その気配りは交際当時から少しも変わりませんでした。

「付き合っていた時よりもよほどイイ関係だ」――そう言われ突かれると、私は全身を震わせ潮まで吹き上げました。タクヤは蔑むように声を出して笑います。私の性器がそう躾られたのは、タクヤの手によるものなのですから。

レンと出会った今ではタクヤとの関係はキッパリ打ち切ったつもりで、着信拒否までしたものです。しかしアドレス帳から削除まではできませんでした。理由は考えたくもありません。
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