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二兎を追って落ちた穴
第3章 清算
「体、使ってくださいって。自分で考えた?」
「うん……」
「頑張った。最高にいやらしい」

そう細められた瞼の向こう、切れ長なのにまつ毛ばかりは長い双眸と見つめあい、根負けした私が目を閉じるのが、かつての開始の合図でした。へそのあたりをまさぐっていた右手はブラを持ち上げて、ついに重要なところに割り込んでき、とうに尖り切っていた私のそれは、改めて男性に捧げられると先端が爆発しそうになります。

「彼氏、どんな人?」
「タッちゃんと、正反対……」
「あ、そ。じゃあ、こんなふうにしてくれるの?」

唇にかぶりつき、舌が差し込まれました。この初めの一時こそ昔のように乱暴でしたが、次第に私を溶かすようなものに変わります。ほんの少し前歯を舐めて顎をこじ開けると、まず動きを止めて私の舌を誘って、先端を絡めあい、それからゆっくり、歯茎を点検するようにしゃぶりつくすのをひとしきり終えると、離れると見せかけて今度は唇をなぞりあげ、するとなぜだか私の舌も、自分の口内を脱してまで、今度は根元まで目指してお互いを求め合う。息つく暇もない。十分な時間をかけたのに、惜しむような唾液のブリッジを感じました。

「違うの。レンは……」
「違わないでしょ。レン君、俺と違って優しいんだろ?」

舌が、鎖骨付近から伸びる腱の根本をなめしきり、体中が切なくなってのけ反ると、ベッドの上で髪のザラツキ。私はもう、任せるしかありませんでした。タクヤは左手まで使い、私の下のフリースへ……わざとらしく全体を生地越しに撫でさすってから、ヒップを、膝裏を、内股を。そしてついに差し込むとショーツの腰骨のあたりを引っ張り、パチン。私は自由になった両手を胸に引き付け、握っては解放を繰り返すだけでした。前戯をこれほど与えられたことはありません。かつてのガッツきとは正反対の攻めに、私の体は煮えたぎり、目尻のあたりが染みました。。

「もしかしてレン君、マジに優しすぎ?」
「……」
「そっかぁ。色んな男、いるんだなぁ」

珍しく、歯切れの悪い言葉でした。
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