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甘えた
第9章 09
「いーこと教えてあげる。都羽ちゃん…愛を欲しがって甘えてたって自覚ないでしょ?」

もっと意味が分からなかった。あたしが甘えてた?

「ほら、自覚ないって顔してるよ。ふふっ」

「べ、別に甘えたいとは思ってないよ…」

「たくさん愛してもらうといいよ。じゃあ、俺ここで降りるから」

電車の扉が開くと、まるで友人関係のようにお互い手を振って別れた。

あたしはケンジとセックスをした時に甘えていたのだろうか?自覚がないって言われたのだから分かるわけがない。




《駅に着きました》

駅に到着した際にメッセージで知らせておいてから、チャイムを鳴らしてすぐに玄関ドアを開けた。近所の結愛花の家にお邪魔する時のように馴れ馴れしく。

「莉壱ー来たよー」

戸口の外から明るく元気よく声を掛けた。これでも莉壱に会いたかった感を出したつもり。

インターホンに出ようと廊下の先に立ってた莉壱が睨んでいる。いや、ただこっちを見てるだけかな?ちょっと距離があって判断つかない。

あれ…ひょっとしてキュロットを睨んでる?やっぱりスカートに見えませんでしたね。へへっ。

一瞬だけ視線をあたしと合わせるとプイッと顔を背け、リビングにあるダイニングテーブルへと姿を消した。

昨日は笑顔で熱烈歓迎だったのに今日はシカトですか?このまま、玄関ドアを閉めて帰りたい……

またもや出鼻を挫かれたあたしは小さくため息を吐いて玄関に足を踏み入れた。
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