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甘えた
第9章 09
「都羽はどこか行きたいところある?」

乗り気になってきた莉壱に背後から言葉をかけられ、駅の券売機の上にある路線図を見上げる。

「都心だから遊ぶところいっぱいあるよね。新宿方面か池袋方面かお台場…あ、浅草。とうきょうスカイツリー!行ってみたい!」

「くすっ。いいよ。展望台に上る?」

「うん、もちろん」

電車に乗ると莉壱はあたしの腰に手を添え、開かない側のドアの隅へ押しやった。

「近くない?」

二人の距離10センチ。せめてもう20センチ下がって欲しい。身長差のあまりないあたし達は目線がほぼ同じで、見つめ合う状態……

「仕方ないだろ」

こんなに近づく程混んでないけど?目のやり場に困って車内に視線を這わせた。

吊革に掴まるスーツ姿の若い女性が莉壱をちらちら見ている。そりゃ見るだろうねー、莉壱の横顔は綺麗だもん。小生意気に睨みつける目つきをしなければね。

あたしの好みは小動物系で優しい表情の人だから、莉壱の顔は範疇外だけどイケメンだってことは認める。

「やっぱ、莉壱はイケメンなんだね」

「なに言ってんの?」

「女の人が莉壱の事見てるよ」

茶化すように笑うと、はんっと鼻であしらわれただけだった。
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