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甘えた
第10章 10
直径3センチ程の円筒形の梨味シャーベットはすでに柔らかくなりかけている。
紙のパッケージを点線通りに切り離し、慌てて二人で食べ始めた。


「ぴーちゃん、垂れそうっ」

ぴーちゃんは、テーブルに滴り落ちそうなアイスの雫をパッケージごと舐める。
二人して、溶け始めたシャーベットの梨味の濃いジュースをじゅるじゅる、ちゅうちゅう吸い上げる。


「おいしー、本物の梨の味だね?」 

ぴーちゃんがアイスを咥えながらスマホに指を滑らす。そして、画面をこちらに見せる。


《期間限定だよ。これね、莉壱のおススメ》

スキンヘッドで眉毛のない顔なんだけど実際会話をすると女の子と話してるみたい。
コクコク頷く仕草も可愛い。
声の出ないぴーちゃんが書く文面は、あたしの脳内では小さな男の子の声で再生されている。


「これさ、じゅーーって吸ってると唇が凍りそうになるね」

《歯がしみるー》

「くすっ、ぴーちゃん歯医者行ってる?」

《歯医者さん こわい》

じゅーっと水分を吸わないと垂れてきて、水分を吸うと氷が固くなり、固くなるとかじれないから、舐めて口の中で溶かす。
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