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甘えた
第14章 長い一日
「知ってた。アイツの彼女を落とすのを阻止するために頼まれてるってこと。俺と一緒に居るのはアイツのためだって。だからアイツに釘を刺したんだよ『都羽と付き合ってる』って。でも都羽は頭の中も気持ちもアイツのことばっかりだったよね」

「えっ、違っ…」

「最初にここに来た時だって、体育祭の時だって、いつもいつも、俺が目の前にいるのに見てくれなかった」

「見てなかったのは莉壱でしょ?目を合わせてもいっつもあたしの後ろの方を見てた…あたしを通り越して長谷川くんを敵視してたでしょ。……でも、莉壱に好きって言った時、あたしを見てくれて嬉しかったよ」

おなかから莉壱を引き剥がして瞳を見つめる。

「ほら、ちゃんと見つめ合えてる」

「俺は最初から都羽しか見てなかったよ?アイツばっかり見て、俺のことは中途半端にしか見てなかっただけじゃん」

そっか、今わかった。あたしはニセモノ任務で莉壱を警戒してた。視線が合わなかったのは、あたしが疑心暗鬼になって莉壱の本心を見てなかったからだ。

「ごめんね、あたしが悪かった…ごめん。でも、長谷川くんのためじゃないよ。幼馴染の結愛花を守りたかったから…莉壱が結愛花に手を出さないように遠ざけたかったんだ」

一瞬沈黙が流れた。2回瞬きをした莉壱が言葉を呟く。

「そーだったんだ。アイツじゃなくて彼女のためだったんだ…」

「結愛花のこと奪うつもりで、あたし達が幼馴染の関係だってことは調査済みだったんじゃないの?」

「奪うっていうか落とす…つもりだったけど、初めて彼女を紹介された時、アイツの顔がマジもんで、近づくなって顔してさ。それにあーいう、か弱そうでピィピィした女は苦手なんだよ。だから考えあぐねて放置してた」

ちょっ!結愛花の悪口言わないでよ!今まで長谷川くんに対してやってきた悪事や結愛花に暴力シーンを見せて怯えさせた事を悪びれもせず、さらっと結愛花を侮辱しないで!

あたしは眉をひそめて目を細めた。
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