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甘えた
第14章 長い一日
リビングに戻ると莉壱の姿が見当たらない。

「莉壱?」

姿を探しながらソファーを覗き込むとそこに居た。背もたれに寄りかかってぐったりとしている。

「だいじょぶ?」

「んーだるい。横になっても起きてても辛い。抱っこして…」

手を伸ばして甘えてくる。あたしはソファーの背もたれと莉壱の間に体を滑り込ませ、後ろから抱きかかえた。

「しっかりご飯を食べないと治らないよ?」

莉壱の肩にあごを乗せ、耳の後ろあたりの髪の匂いを嗅いだ。
汗と埃と微かに病院の匂いが混ざった匂い。人の脂の匂い。あたしのものとは違う匂い。

「臭くないけど臭い…」

「風呂入ってないから」

髪に顔を埋めて鼻を押し付ける。
これは病みつきになりそう…

「嗅ぐのやめて?」

「ふふっ…やだ」

「都羽あったかいね。少し眠っていい?」

莉壱の前髪を掻き上げ、熱がないか確認する。

「うん、疲れちゃった?おやすみ…」

途端に体に重みがかかる。
しゃべり疲れたのかな…たくさん話したもんね。言いたいことも言い合えて、食い違っていたお互いの気持ちも近づいて、もう莉壱に隠し事をする必要も無くてあたしも気が楽になった。
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