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甘えた
第14章 長い一日
「ついでに顔も拭こうね」

「痛っ、いてっ」

傷テープを剥がすと両方の頬に紫色のあざがひろがっている。擦り傷も治りかけ、腫れも引いてきてるようで、思ったほどひどくはない。

「いっぱい冷やした?」

「すぐ、病院に連れてかれたから処置はしてもらったと思う」

お湯に浸け固く絞ったバスタオルの端をあざの上に乗せる。

「冷やすんじゃないの?」

「今度は血行を良くするといいよ、傷テープも要らなそうだね」

水とお湯で交互にタオルを当てる。

「誰が病院に連れてってくれたの?」

「アイツが帰る時に親父に連絡したらしくて、会社の人が来てくれた。母親にすっげー怒られて…俺、どーしよ…」

お母さんに怒られてしょげるなんて、しっかり息子してるんだね。結局あたし達ってまだまだ子供だ。

「やんちゃな子供を持ったお母さんは大変だ。なーんてね。いいなぁ、お母さんが居て」

「そっか、都羽ん家お母さん居ないんだっけ…」

「居るよ?心の中にだけど。莉壱はお母さん大切にしてね」

「あは、俺の母親は仕事大好き人間だから、あんまり母親らしいことしてもらったこと無いな。でも、そうだね…」

「そうだよ」

珍しく神妙な表情をした。莉壱の家庭もなかなか複雑そう。
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