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甘えた
第3章 03
無言のまま、すーっと隣に並ぶと、あたしよりも背が高く、清潔そうに髪が短く整えられているスーツ男があたしを見て微笑んだ。

年上で優しそうな表情をした人。

こんな身なりをしているけど、倉庫に来てるってことは学生時代はやんちゃしてたんだと思う。

腰に手を廻される。

「外に出ない?」

あたしが誘って歩き出す。

壁際を出口に向かって進んでいると、周りにやたら女の子が多い。

どうやらハーレムの輪が近くに居るらしい。

「…ねぇ……」

いきなり傍で男の声がする。

なにか騒ぎでも起きたのだろうか…巻き込まれないうちに避難しなくちゃ。

警備係の光政に捕まらないよう足を速めて倉庫から抜けだした。

近くにあるというのでスーツ男のマンションまで街灯の少ない倉庫街の夜道を二人で歩く。

一夜限りなんだからプライベートな空間に踏み込むのはちょっと…

「知らない女を家にあげて平気なの?」

「あのパーティーで声をかけてきた君なら大丈夫でしょ。」

あーやっぱり常連だ。

ワンナイトラブってことは暗黙の了解だった。

「ところで名前、教えて?」

「みやこ」

本名を名乗る必要はない。いつも使っているもう一つの名前。

「そう、みやこちゃんね。俺はユウ」

「ユウって呼んでいい?」

「いいよ」
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