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甘えた
第15章 15
あたし何も言い返せない……
莉壱から視線を逸らす。

体を起こした莉壱の不安げな顔が、逸らした視線の先に映し出される。

「ごめん。勝手にヤって悪かった。……もしもの話でモメたくないな」

莉壱が折れてくれた。でもあたしはモヤモヤしてる。

父子家庭で育ったあたしは子育てが楽じゃないってことを知ってる。

夢みたいな理想の話をしてしまう莉壱のことをお子様だと感じると同時に自分の緩い性基準も浅はかだったと気付かされる。

とりあえず今現在ありもしないことの話をしても仕方ない。

「うん…」

ひと呼吸おいてから素直に頷き、さらさらの黒髪に手を差し込んで撫でた。

「都羽、俺の事ちゃんと見て」

目で見るだけじゃなくて、莉壱の考えを、行動を、見ろってことでしょ?

「うん。見てるよ」

仕事で忙しい両親や異母兄弟の長谷川くんに目をかけてもらえなかった莉壱。これからは、あたしがちゃんと見ていくから。

莉壱が安心したように笑った。

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