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甘えた
第17章 17
5月の後半に差し掛かった頃、2カ月ぶりの『つらい』メールが届いた。いつもと同じ一言だけ。

莉壱の現状が見えないから、どう励ましていいやら…いくつもの前向きな言葉を選び、あたしは元気でやってるって今まで伝えてきた。『寂しい』って言葉を封印してるから、メールの中身には甘いムードはない。
初めてのメールの返信で、好きって気持ちを素直に伝えようとも思ったけれど、恥ずかしさでためらった。
今は、好きなのはあたしだけなんじゃないかっていう不安で尻込みしている。

朝届いたメールに対して返事の内容をどうしようか、講義中に気もそぞろだ。

「あたしたち別れてないよね?」そうストレートに聞いてみようか。「おバカだなぁ」って笑ってくれる…?「都羽はそうしたいの?」って距離のせいで拗れるかもしれない。
ミナミの言う通り「友達だよ」なんて言われたら……そんな勇気はない。

距離って物理的な長さのことじゃなくて、心の距離が重要なんだって改めて痛感した。

莉壱の心が知りたい。

返事の内容は決まった。莉壱がつらいと言うのなら「あたしも」って答えれば、逆に励ましてくれるだろうか?


朝、いつものように目を覚まし、いつものように大学へ行く準備をする。
時間を確認するためスマホに手を伸ばすと、メールの着信通知が目に留まる。

表示されたニックネームは、いつの間にか莉壱によって書き換えられた『恋人』だった。
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