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甘えた
第5章 05
突然、一人の女子が結愛花の後ろ姿めがけてペンキをぶちまけた。

なんで手元を押さえなかったのだろう…なんでペンキの缶を止めなかったのだろう…あたしは体でペンキの液体を防いでいた。

ほんの一瞬の出来事だった。

「久保?…大丈夫か?」

結愛花と入れ替わるように長谷川くんが女子トイレに入ってきた時には、緑色のペンキを左半身にべっとり付けた妖怪に変わっていた。

肩にかかったペンキは制服のシャツを伝いスカートへと垂れている。

胸の下まである長い髪もペンキの色に染まっていく。

鼻をつくニオイが充満し、床や個室の壁にペンキは飛び散り、あたしが体当たりした時にこぼしたらしく4人の女子の制服も汚れていた。

「とわちゃんっ。だ、大丈夫?」

「ゆめ、汚れるから外で待ってて。ね?」

泣きそうな顔で駆け寄る結愛花を手のひらで制止する。

「長谷川くん、先生を呼んで来てもらえるかな?」

悪事を働いた4人の女子は2年生と判明した。

彼女らは長谷川くんに現場を見られ、ただ泣くばかりだった。

あたしは事を大きくした。

嫌がらせでペンキをかけられたところを長谷川くんに助けられたって先生に訴えた。

被害者としてあたしの名前を出したが、心当たりのある人にとっては分かること。

結愛花をやっかんで悪口を言ったり、嫌がらせをする人たちに対しての警告のつもり…
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