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intimidation love
第3章 吉野と一葉

背後にあった扉が突然、壊れるのではと思う程の大きな音を立てて揺れた。
その衝撃に驚いて顔を上げた時、私は視界の端に先輩の長い足を捉えた。
先輩の足が離れた扉には、くっきりと足跡が残っていた。
普段穏やかな先輩とは結び付かない粗野な行動に、私は呆然とその場に立ち尽くした。
「それは何の謝罪?」
「…え」
「別に、謝られるような事何もないんだけど俺的には」
遅れて、体に震えが訪れる。
目の前で、にこやかに微笑む先輩が怖いと感じた。
「この状況で謝られたら、まるで俺が振られたみたいで気分悪いんだよね」
私はようやく、余計に先輩を怒らせてしまったのだと混乱した頭で理解した。
「ちが、私…そんなんじゃ」
「じゃあ何で謝んの」
先輩の笑顔が、徐々に歪んで行く。
実際に歪んでいたのか、それとも私の視界がぼやけているからなのか、その区別すらもつかない。
「そうやってすぐ黙っちゃうんだから狡いよね。すげームカつくんだけど」
これ以上先輩を怒らせたくない。
でも、もしまた私が何かを言えば更に先輩を怒らせてしまうかもしれない。
怖い。
早く、ここから出て行きたい。
早く、帰りたい。
早く、ハル君に会いたい。
「っ、く…」
嗚咽を堪えられず、震える足が体を支えきれずにずるずるとその場に崩れ落ちる。
「…あーあ、泣いちゃった。これじゃあ俺がいじめてるみたいじゃん」
先輩の呆れ声が頭上から聞こえても、ぼろぼろと涙は溢れ続ける。
しばらくの間私を見下ろしていた先輩は、やがて自身もその場に体を屈めた。
俯いていた私の顔は先輩の片手に掴まれ、無理矢理上を向かされた。
すぐ近くに先輩の顔があるのに、滲んだ視界のせいで表情まではよく見えなかった。
「ヨシノちゃんは実は泣き虫な子だったの?」
「っ…」
「怖かった?ごめんね」
あやすような優しい声に、零れていた涙がようやく止まった。
それでも、恐怖心は消えてはくれない。
「目、真っ赤。子供みたい」
からかうように、先輩が笑う。
「可愛い」
そう呟いた先輩の唇がそっと瞼に押し当てられ、慌てて押し退けようとした腕を逆に掴まれてしまう。
私は恐怖から、つい声を上げてしまった。
「やだっ、ハル君…!」
その衝撃に驚いて顔を上げた時、私は視界の端に先輩の長い足を捉えた。
先輩の足が離れた扉には、くっきりと足跡が残っていた。
普段穏やかな先輩とは結び付かない粗野な行動に、私は呆然とその場に立ち尽くした。
「それは何の謝罪?」
「…え」
「別に、謝られるような事何もないんだけど俺的には」
遅れて、体に震えが訪れる。
目の前で、にこやかに微笑む先輩が怖いと感じた。
「この状況で謝られたら、まるで俺が振られたみたいで気分悪いんだよね」
私はようやく、余計に先輩を怒らせてしまったのだと混乱した頭で理解した。
「ちが、私…そんなんじゃ」
「じゃあ何で謝んの」
先輩の笑顔が、徐々に歪んで行く。
実際に歪んでいたのか、それとも私の視界がぼやけているからなのか、その区別すらもつかない。
「そうやってすぐ黙っちゃうんだから狡いよね。すげームカつくんだけど」
これ以上先輩を怒らせたくない。
でも、もしまた私が何かを言えば更に先輩を怒らせてしまうかもしれない。
怖い。
早く、ここから出て行きたい。
早く、帰りたい。
早く、ハル君に会いたい。
「っ、く…」
嗚咽を堪えられず、震える足が体を支えきれずにずるずるとその場に崩れ落ちる。
「…あーあ、泣いちゃった。これじゃあ俺がいじめてるみたいじゃん」
先輩の呆れ声が頭上から聞こえても、ぼろぼろと涙は溢れ続ける。
しばらくの間私を見下ろしていた先輩は、やがて自身もその場に体を屈めた。
俯いていた私の顔は先輩の片手に掴まれ、無理矢理上を向かされた。
すぐ近くに先輩の顔があるのに、滲んだ視界のせいで表情まではよく見えなかった。
「ヨシノちゃんは実は泣き虫な子だったの?」
「っ…」
「怖かった?ごめんね」
あやすような優しい声に、零れていた涙がようやく止まった。
それでも、恐怖心は消えてはくれない。
「目、真っ赤。子供みたい」
からかうように、先輩が笑う。
「可愛い」
そう呟いた先輩の唇がそっと瞼に押し当てられ、慌てて押し退けようとした腕を逆に掴まれてしまう。
私は恐怖から、つい声を上げてしまった。
「やだっ、ハル君…!」

