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続・飼っていたペットに飼われています。
第54章 あげない(スイ目線)
 ドクン! と大きくトオルの胸が高鳴ったのがわかった。
「……嘘、でしょ? サキちゃんは俺のことなんて…。」
「いえ…、あの……。公私混同しちゃいけないなって思っててお伝えしたことはなかったんですけど…。本当です。私、芸能人の方で唯一ファンになったのはサクラギさんだけですから。だから、ライブザファースト決まったときは誰よりも嬉しかったぁ。……えへへ、言っちゃった。」 
 カタン、と震える手でサキが俺の前に皿を置いてサクラギに向き直ると胸元までを真っ赤にしながら笑みを含んだ泣きそうな顔で、でもハッキリとした声でこう言葉を続けた。
「サクラギトオルさん。ずっと…、好きでした。これからも大好きです! 握手してください‼」
 2つの心臓の音がバクバクとはっきり重なってうるさい。それに苛つくよりも先にまずいと思った。
 今のこいつらを触れさせたら終わりだ。
「だーめ! ………サキ? 何してるの? 俺の前で浮気?」
 震える指と指の先が重なる寸前に後ろからサキを引き寄せて抱きしめ、動きを止める。
「スイ…。でも、スイのお兄ちゃんなんでしょ? それなら……。」
「そ、そうだよ、スイ。俺ハグ会とか普通にやってるし、別に握手くらい普通だろ?」
 そういって食らいつくトオルの目に余裕はなく、再度サキに触れようと手を伸ばす。
「なあ、トオル。俺のだぞ? サキはもう俺のだ。こいつはトワじゃない。サキはお前のものじゃなくて俺のなんだよ。」
「っ…………!」
 そういうと案の定トオルは黙って動きを止めてしまう。こういう所は昔から変わらない。
「相変わらずだな、トオルは。トワはいつもお前が帰ったあと『トオルは優しすぎる』って愚痴ってたけど、俺からしたら只の馬鹿だよ。もっと早くトワを連れて逃げてればよかったのに。」
「スイ! その話は…。」
 慌てて高木に助けるよう目をやるが、その男はそれをピシャリとはねつけた。
「いや、いいよ。凛子とサキちゃんの記憶は後で消すから。トオルくん聞いといたほうがいいよ。どうやってスイがサキちゃんの運命をねじ伏せてきたか。どれだけ彼女の可能性を潰してきたか。……こいつは俺より酷いぞ。」
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