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ドS教授は変態です。
第4章 爽やか桐生くん
「ユラーー!!!」
元気に声をあげながら走り寄るってくる茉莉花。
相変わらず元気だな。
茉莉花が、到着する寸前に、桐生くんが耳元で囁いた。
「今夜ーー」
「え?」
驚いて振り向くと、もう桐生くんは茉莉花の方へ手を振っていた。
※※
夕食をとり終わり、同室の茉莉花は秘書課の子や、
営業部の子たちと繁華街へ飲みに出て行った。
誘われたけれど私はもちろん、居残り組だ。
ソファに身を預けて本を読む。
ちらりと時計を見れば、そろそろ9時。
桐生くんが、囁いた言葉。
「今夜9時に南側の砂浜に来てください」
なんだろう、いったい。
そもそも、桐生くんも誘われてるだろうし、飲みに行った可能性も高い。
かといって、本当に待っていたなら申し訳ない。
うーん、と背伸びをすればバキバキと背中がなった。
「少し、散歩がてら行ってみるか」
今はリゾート地らしく、ロングワンピースを着ている。
茉莉花が、お揃いを買いたいとごねるので、並んでいたもので1番落ち着いた色のものを買った。
濃紺に白い花が少し裾にプリントされたもので、腰と肩にある紐の先に小さな飾りが付いていて、微かにシャラシャラと動きに合わせて鳴る。
一緒に持っていた白いストールを肩にかけて、読みかけの黒木壱也の小説と小銭用のお財布と鍵を持って部屋を出た。
リゾート仕様のこのホテルは白を基調としていて、廊下からは海が見える。
ゆっくりと砂浜へ向けて手頃な階段を降りていった。
階段を一つ降りるたび、シャラシャラと音がなる。
海の波の音が、少しずつ近づいてくる。
月明かりで照らされて、不思議な色合いを見せる空と海。
サクサクと音をさせてやっと砂浜へたどり着く。
ゆっくりと見渡してみたが、そこには、誰もいなかった。