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癖の下僕
第7章 4話 市ヶ谷あかり
自宅でテレビを見ていたあかりのもとへ、新藤からの電話がかかってきたのは、その二日後の夜だった。
「こんばんは。今大丈夫ですか」
そう聞かれてあかりは
「ええ。どんなご要件でしょうか」
と冷たく仕事口調で答えた。新藤はそれを気にすることなく
「啓君の件だけど、今度やる生放送特番の〝キングダム・シンガー〟への出演をオファーすることが決まったよ」
キングダム・シンガーは毎年、海の日に生放送される人気音楽番組だ。
沢山の有名ミュージシャンを集めて、若手歌手のパフォーマンスを評価する。ときにはちょっと売れっ子の歌手にも、容赦ない批判を浴びせ、そのせいで業界を去った若手も少なくない。
ただし、そこで高評価を得られれば、一気にスターの仲間入りになることも夢ではない。普通は、まったくの無名歌手など出演することはできない番組だ。
「そんな、すごい番組、どうやって」
そうあかりが聞くと、新藤は
「まあ、番組プロデューサーに貸しがあると言っておくよ。それに出演する芸能人はみんな、僕のトモダチだからね」
篠崎先輩の言った通り、新藤は業界にかなり顔が利くらしい。
「すごいですね。本当にありがとうございます」
素直にあかりがお礼を言うと、新藤は
「お礼はいいんだ。約束したからね。だけど、条件がある」
言った。あかりは、眉をしかめて
「その条件はこのあいだ終わらせたはずですが」
と冷たい声で答えた。
「たしかに。だからこの条件を君が聞かなくても、九段下啓へのオファーを取り下げることはしないよ。
ただこの番組での評価は、彼の歌手としての一生を左右するかもしれない。下手な批判は受けたくないだろう」
新藤は出演者にも顔が利く。あかりが断れば啓の実力とは関係なしに、ひどい批判をうけることになるのだろう。
「条件ってなんですか?」
しかたなくそう聞くと、
「とりあえず今週の金曜の夜七時、もう一度、この前の店にきてくれるかな。その時に話すよ。それじゃ」
そういって新藤は、あかりが返事を聞かずに電話を切った。
「こんばんは。今大丈夫ですか」
そう聞かれてあかりは
「ええ。どんなご要件でしょうか」
と冷たく仕事口調で答えた。新藤はそれを気にすることなく
「啓君の件だけど、今度やる生放送特番の〝キングダム・シンガー〟への出演をオファーすることが決まったよ」
キングダム・シンガーは毎年、海の日に生放送される人気音楽番組だ。
沢山の有名ミュージシャンを集めて、若手歌手のパフォーマンスを評価する。ときにはちょっと売れっ子の歌手にも、容赦ない批判を浴びせ、そのせいで業界を去った若手も少なくない。
ただし、そこで高評価を得られれば、一気にスターの仲間入りになることも夢ではない。普通は、まったくの無名歌手など出演することはできない番組だ。
「そんな、すごい番組、どうやって」
そうあかりが聞くと、新藤は
「まあ、番組プロデューサーに貸しがあると言っておくよ。それに出演する芸能人はみんな、僕のトモダチだからね」
篠崎先輩の言った通り、新藤は業界にかなり顔が利くらしい。
「すごいですね。本当にありがとうございます」
素直にあかりがお礼を言うと、新藤は
「お礼はいいんだ。約束したからね。だけど、条件がある」
言った。あかりは、眉をしかめて
「その条件はこのあいだ終わらせたはずですが」
と冷たい声で答えた。
「たしかに。だからこの条件を君が聞かなくても、九段下啓へのオファーを取り下げることはしないよ。
ただこの番組での評価は、彼の歌手としての一生を左右するかもしれない。下手な批判は受けたくないだろう」
新藤は出演者にも顔が利く。あかりが断れば啓の実力とは関係なしに、ひどい批判をうけることになるのだろう。
「条件ってなんですか?」
しかたなくそう聞くと、
「とりあえず今週の金曜の夜七時、もう一度、この前の店にきてくれるかな。その時に話すよ。それじゃ」
そういって新藤は、あかりが返事を聞かずに電話を切った。