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第11章 8話　篠崎紗矢

　男の顔を見上げると、とてもさわやかな、いかにも好青年と言った風貌だった。男は、紗矢に頭をさげ、
「すみません！突然。僕、三鷹翔太って言います。今話しかけないと二度と会えないかもって思って・・・本当にごめんなさい」
と言った。紗矢が戸惑いながら、
「え・・・どういうことですか？お知り合いでしたっけ・・・・」
と答えると、翔太は
「いえ！今、初めてお会いしました！・・・・・あの、そのですね、えーっと・・・・」
翔太は顔を真っ赤にして、しばらくもじもじしていると、人が周りにたくさんいるホームの上で、大きくお辞儀をしながら、大きな声で
「一目惚れをしてしまいますた！僕とけぇっ。けっこん、してください！」
と咬みながら言った。周りの人は、一瞬ビクっとしてから、クスクス笑いながら二人を見ていた。
翔太は、唖然とする紗矢の顔を、お辞儀をしたまま顔をあげて真剣なまなざしをして見つめると、
「僕じゃ、駄目でしょうか？」
と言った。
「そんなこと言われても、わたし困ります・・・」
と、紗矢も翔太に負けないくらい顔を赤くして答えた。
「とりあえず、恋人に・・・いや、友達でいいです。・・・友達になってください」
と、また頭を下げられたので、紗矢は
「と・・・友達なら・・・」
と小さな声で返事をした。
「とりあえず・・・場所変えませんか？ここじゃ、話もしにくいし。・・・僕、全部おごりますし、帰りも家まで送りますからっ！」
と翔太に提案されたので、「家までは困りますけど・・」と言いつつ、近くの居酒屋に二人で行くことになった。