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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第79章 好い人達
現場作業員の中年オヤジがオレを見て話し掛けてきた。

「いや、別に何も…ただいい天気だなぁって」

「そうか?太陽が雲にかかっていい天気とは言えないがなぁ」

オヤジも空を見上げながら、タバコの煙を吐き出した。

「ところで仕事は慣れたか?」

「ええ、まぁ何とかですが、前より身体が鍛えられたというか、それほどキツくは感じなくなったですね」

「そうか、まだ若いんだからな。仕事もいいけど、たまには外で遊んでこいよ。いっぱい働いて、いっぱい遊んでこい」

オレの背中をバンと叩きながらオヤジは横になって昼寝をした。

いっぱい働いて、いっぱい遊ぶか…
何かいい言葉だな。
オレはこの作業員の人達が好い人ばかりで、まだガキのオレに親切丁寧に仕事を教えてくれる。

親子程の年は離れているが、オレを1人の男として扱ってくれている。

前にいた型枠大工の連中とはえらい違いだ。
出来れば、ずっとここで働いていたい。

夕方になれば、早く学校に行け、遅刻するぞっ!と快く送り出してくれる。

オレが学校に行ってる間も、残業で夜遅くまで仕事している時だってある。

何だか申し訳ない気持ちになる。
1度、仕事が忙しいなら、今日は休んで残業します、と言ったら、余計な事気にしないで勉強してこい!と言われた。

この人達はオレの事を思ってそう言ってくれている。
誰も信じないと思っているが、出来るだけ、この人達の為に早く一人前になって恩返しだけはしないと、そう思える程、好い人ばかりだ。

だから金だけじゃないんだ。
金ばかりの事を考えて死んでいった兄の二の舞にはなりたくない。

そして休憩が終わり、また仕事を再開した。

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