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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第136章 やっぱり話せない…
そんなブーツでアクセルやブレーキを踏めるのか?ってぐらいなヒールが高めのブーツだ。

オレは後ろのスライドドアを開け、荷物を置いて助手席に座った。

「せっかく車借りたんだからさ、ドライブしない?」

部屋に直行じゃないのか。益々言いづらくなってきた。

「ドライブ?どこら辺を?」

「なぁんにも考えてない。あ、海とかいいんじゃない?冬の海岸なんていいかもね」

車内は洋楽が流れていた。

そして車は発進した。
あのアパートに住んでかれこれ5年近く経つ。
その間、母親が亡くなり、オレは1人ぼっちになった。

少し感傷的になりながらも、住み慣れたアパートを見て、別れを告げた。
(今までありがとうな)
建物に感謝するのも変だが、何故だかそんな気分だ。

ナツは楽しそうに運転して、高速に乗り、結構なスピードを出して海まで走った。

オレはその間、ナツに言うかどうか迷った。
今言ったらナツはどんな顔をするのだろう?

そんな事ばかり考えているうちに、車内の閉鎖感が耐えきれずに息苦しくなってきた。
おまけにかなりスピードを出してるから、オレはまた発作が起こりそうになった。

ナツが何かを話しかけてきてるが、オレはゆっくりと鼻で顧客しながら自分を落ち着かせようとするのに精一杯だ。

「ほら、見て海だよ」

ナツが指差した方向に海岸が見えた。

どこか淋しげな感じのする海岸。季節外れのせいもあるが、誰もいない砂浜。

ドライブの定番といえば海なのだが、オレには海に対して何の思いもない。
それどころか、ただ波を眺めて何が楽しいのだろうか?ただそれだけである。
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