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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第176章 漂流街
椅子に座り、天井を見ながら達也は今までの経緯をソンヒョクに話した。

「ほぅ、お前も相当なワルだな。で、今はここに身を隠してるってワケか」

「うん、まぁ、それもあるんだが、何となくこの界隈が気に入ってな。ここへ戻ってまだ日が浅いが、こんな昔ながらの町並みがあるんだって初めて知ったよ」

以前は道路を挟んだ向こう側のコリアンタウンにナツと住んでいた。
だが、ナツと別れ、居場所を転々として身を隠していたが、一番しっくりくるのがこのコリアンタウンだと気付き、再びこの地を訪れた。

「イルボンのクセにこの町並みが気に入るなんて、お前少し変わったヤツだな」

ソンヒョクは窓を開け、タバコの煙で充満した小屋の中を換気する為、空気を入れ換えた。

「オレ、ホントは小島って名前じゃねえんだよ。本名は達也。名字はワケあって名乗らねえけど」

達也はソンヒョクに対して包み隠さず今まで起こった出来事を全部話した。

コイツなら何話しても大丈夫だろう、そんな感じに思えて正直に喋った。

「社長だったヤツが命狙われて顔まで変えて生き延びるって随分と汚え事やってきたんだな」

ソンヒョクは鼻で笑いながら、リングの上に置いてあったオープンフィンガーグローブを取り、中の綿を入れ替えていた。

「何だよ、そりゃバカにしてんのか、おい!」

バカにされたかのような言い方に達也はイラッとした。

「生きてく為には色々と知恵を絞っていかなきゃなんないって事だなって思っただけだ、悪気はねえよ」

ソンヒョクもこの日本で生きていくにはこの仕事しか無い、と思い殺し屋という稼業をやっている。

「しかしアンタ、どこでその格闘術習ったんだ?まさか殺し屋の養成所とかあんのか?」

「ブワッハッハッハ!あるワケないだろ!マンガの読みすぎだぞ達也!」

ソンヒョクは腹を抱えて笑った。

「じゃあ、どこで?」

ソンヒョクはリングに上がった。

「ここだよ」

そう言ってリングを指さした。

「ここは元々ジムだったのか?」

確かに格闘技ジムの名残はある。しかし、リングとサンドバッグのみしか無い。

「いや、以前ここには世界中にある全ての格闘術と学問を教える人物がいたんだ」

「ん?世界中って…じゃあテコンドーだけじゃなく、ボクシングやムエタイ、ブラジリアン柔術とかもここで覚えたのか?」

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