この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ファニーキンキー
第11章 それは解放
「セーフ…」
トイレの個室で地獄のような苦しみから解放された瞬間、あたしは幸せをかみしめた。
生きてるって素晴らしい!!
テンションがハイになったあたしは授業に戻らず屋上へ向かった。
青空と白い雲、そして心地よい風。授業中で人の気配もなく、この世界にたったひとり、飛び切りの解放感を味わっていた。
そうだ、このチャンスにアレやっちゃお!
好きなバンドがいる。小さなライブハウスで活躍していた頃からのファンで去年プロデビューを果たしたWan to Phraseというバンド。
デビューをする際にベースがメンバーチェンジした。その元ベースの人が手掛けた楽曲が今月リリースされたアルバムの中に収録されたのだ。
バンドのイメージは“夜”とか“暗いライブハウス”激しいロックなのに歌詞がせつなかったりする。そこが好きなんだけど。
この曲は、歌詞の雰囲気は今までと同じだけど、音に風を感じた。青空が見えた。
元ベースの人が作った曲だからちょっと異色なのかもしれないが、大好きだった初期のメンバーを思い出した。
二度とあのメンバーで演奏はされないんだと思うと、やるせなくなる。メンバーだけではなくファンとしても、いろんな思いが籠った一曲。
屋上で一番高い場所、階段室の屋根の上に登ると、イヤホンを耳に装着し、携帯音楽プレイヤーでその曲を再生する。
空を仰ぎ見て、雲をつかむ様に手を伸ばし、吹きぬける風を体に受ける。
人に見られたら恥ずかしいこと間違いなし。
あぁ、やっぱり音楽の中に風が吹いてる…魂が浮きそう…